□■□■  「日本美術そうだったのか通信」 Vol.8
発行 有限会社アートオフィスJC
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 こんにちは。
 アートオフィスJC 田中千秋です。

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今日の一枚 「須田剋太 『アーティチョーク 』」
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その4
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「須田さんという人は本当に飾りっ気がなくて、赤ん坊のまま体だ
け大人になったような人だなあと...。」
須田が20代を過ごした浦和時代を知る、田中秀雄氏の言葉です。
(『画狂 剋太曼荼羅』より引用。以下引用部分は同様)

とにかく剋太は絵のことだけ考えてあとは一心不乱、わき目もふら
ず絵に向かいました。

浦和時代の須田剋太。

いつもニンニクのにおいをぷんぷんさせ、ひげは伸び放題、もこも
こ着膨れして、廃校やら工場跡に住んで、食事はそこいらの蛇をとっ
て滋養がつくといい、「アスファルト」のマチエールが気に入れば
ツルハシを持ち出して道路を壊して持ち帰ろうとして警察につかま
り、奇人変人として浦和で有名であったが、周囲はまじめな絵描き
として認め、また愛していたようです。

目指していた東京美校は4回の失敗の上断念。アカデミックな気風
は剋太には合わなかったし、自分の信念を曲げてまで「合わせよう」
という考え方はなかったのです。

変人に見られようが、剋太は自分が何をやろうとしているか、はっ
きりしていました。

「社会の画壇は、私の考えとは全くの反対で、人々はマチス、ピカ
ソ、モディリアーニなどの様式のみの真似ばかりで、それもいいん
ですが、それらの作家や絵の<実態>を自分の様式で掴もうとして
いないんです。そのように教えもしない。といって自分がその頃掴
めたかというとそうではないのだが、ただ、掴もうと苦しんでいた
ことは確かです。そんなことに夢中になっているんだから、その年
だって、無論美校は駄目ですよ。」(昭和55年談)

その後、寺内萬次郎に見出され、30歳(昭和11年)で文展に入
選、43歳(昭和24年)抽象絵画の旗手・長谷川三郎と出会い、
抽象画に転向、世界的に注目を集め、65歳で司馬遼太郎の「街道
をゆく」の挿絵を担当、再び具象を描き始め、脚光を浴び、その後
亡くなるまで、司馬との「二人三脚」が続きます。

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画家は、ともすると、生活のため、自分のパターンに安Zしがちで
すが、剋太は、愚直に、あるいは<愚>そのものとして、自分の画
を探求しました。アカデミックな世界、一般社会、経済社会への順
応性がほぼ全くないことが、芸術家としての剋太を救ったともいえ
るでしょう。

 一度、抽象画の世界を経て、司馬との出会いによって、具象の世
界に引き戻されるのですが、そのときの剋太の画には、もはや画の
約束事をかなぐりすてた「強さ」がありました。

 単純に「約束事を捨てる」というだけならば、現代美術的世界が、
これも何十年とやってきていることですが、こちらは、「約束事を
捨てる」という「約束事」にはまって、人の<感情>に訴える事を
忘れて行き詰まっていったように見えます。

 剋太の場合は、小説の「挿絵」であるということ、そして、司馬
という巨きな理解者を得ること、そして同時に、自分の絵の本質を
捨てなかったことで(捨てるような器用さなどなかった)、そのエ
ネルギーが多くの人に理解と共感を呼ぶような表現を得たように思
います。

 ところで、彼は晩年、長者番付にも載るような売れっ子になるの
ですが、まったくお金の計算ということができなかったそうです。

 それで気持ちのよい話が、晩年、あるお好み焼きやさんが、司馬
を通して、剋太の絵を買いたいと相談したところ、そのお店にやっ
てきて、店のつくりなど検分した後、店のつくりに合わせた絵を大
量に寄贈したというエピソードです。
 
 計算外の理に生きているという事がすごく伝わってくる話で、私
は胸のすく思いでした。

ああ...長くなりました。もうそろそろ。

ところで当店販売品の「アーティチョーク」は須田の晩年に書かれ
た作品で、「司馬」以後の作品は書以外はグワッシュの小品が多い
のに対して、油絵を厚塗りした、「ブルー」の強さが印象的な12
号の大作です。
これは絵というより「立体作品」と呼ぶべきもので、照明に照らさ
れた時のマチエールの光、陰影に彼の魂を感じるのですが、コンピュー
ターの画面では最も伝わりにくい類ですので、じかにご覧に入れた
い一品です。

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須田剋太『アーティチョーク』
キャンバス・油彩・額装
画  66 x 44 cm 額 77 x 62 cm 
画中にサイン・共シール
価格   お問い合わせ下さい 
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本日は読んで下さいまして有難う御座います。
また明日!

((ご意見、お待ちしています。このメールへの返信で私に届きます。))

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